1(上)、木地作り…材木店
1(下)、木地作り…工房
2、漆塗り
*目次であり、リンクはありません。
1(上)、木地作り… 材木店
木地作りの主な流れは、
まずは材料となる原木を入手する所から始まります。
. . 材木店に行くまで . .
木地を作るには材木を買わなければなりませんが、その前に一体何をどれだけ作るかという見通しが必要です。
材木店では巾や厚みなどを決め製材するので、 買ってから何を作るか考えても間に合いません。 ですので、在庫を考慮し 漆器制作の計画を立て、また作業時間を確保できる時期に合わせるため、買い入れまでに半年から1年くらいかかります。
. . 製材する . .
材木店では、頼んでおけば、自分の使いたい木を仕入れてもらうことができます。ただその原木が店に来るまでに、多少の時間がかかります。(自然の物なので、各地の市で集める必要があるので)
製材は、 自分の制作予定リストを見ながらその場で調整して、木をカットしてもらいます。バンド鋸の高い音が響き、 手際の良い仕事で、みるみるうちに原木はさばかれていきます。
次の日には材木店のトラックで、工房に運ばれてきます。
1(下)、木地作り…工 房
材木が届いたら、そのままにしておくと木にヒビや割れなどが入ってしまうので、まずは手早く大体の大きさにカットしてしまいます。それから、荒挽き、乾燥、仕上げになります。
木は有機物なので神経を使います。 乾燥が足りないと、後でクルウ(変形)こともあるので注意します。 作る大きさや厚みでかなり異なるのですが、この期間が半年から数年です。
木地になるまでに、2回ろくろ挽きをします。荒挽きでは木は柔らかく水分が飛ぶほどですが、仕上げの時には木は固くなっておりデリケートな作業が要求されます。
挽くのは棒状で先端に刃のあるカンナという道具ですが、 自分でハイスという鋼材を加工し刃を着けます。炉でコークスを燃やし炎の色(=温度)を見ながら、トンチン.トンチンと鋼を打ち、まるで山の鍛冶屋のようです。
2、漆 塗 り
木地が用意されると、漆を塗る作業に取り掛かります。 塗りは、下地から仕上げまで、塗っては研ぎという作業を10回以上繰り返します。
ちょっと見は戸棚のようですが、これは漆を乾かす「風呂」と言われるものです。
そして、塗るたびに風呂に入れて乾燥させます。漆は高温多湿であるほどよく乾くので、空気が乾燥する冬は湿り気を与える必要があります。 意外に感じられるかもしれませんが、ウルシが乾くという現象は、漆成分の硬化であり化学的変化を意味します。
ところで、私の若い頃の話です。漆塗りの仕事をしていて、初めて扱う漆に戸惑っていました。(木地については、なじんでいましたが…)それでは、採集するところから漆を見てみようと、半年ほどですが東北に漆掻きの修行に行きました。
幹に傷をつけ採れる乳白色の漆は、樹木の身を守るための樹液なのです。それを器づくりに利用した先人の発見と知恵に感謝です。
漆器の始まり
日本の漆器は驚くほど古く、縄文時代に起源をもっています。函館市の垣の島遺跡からは漆を塗った装飾品が発見され、約9000年前の世界最古の漆工芸品であることが判明しています。
また、2014年5月にさいたま市は、南こうぬま遺跡から縄文中期(約4900年前)の日本最古の漆の木を出土したことを、発表しました。その木には漆を採取したスジ状の傷跡が9本残り、石器で採取したとみられています。(さらに、 漆の入った土器.制作途中の漆器.漆ぬりの櫛や弓なども出土され、 漆の栽培から樹液を採取し漆器制作まで行う作業所だったようです。)
長い日本の歴史と漆器の歴史はよく重なっていて、嬉しくも誇らしいことだと私は思います。