フランスの美食術
《 食文化の危機 》
意外かもしれませんが、美食の国フランスでも食は危うい状況にありました。その原因として、グローバリゼーションに伴うファストフードの流行、家庭で調理時間がかけられず加工食品の浸透、さらに伝統の味を伝える世代間の交流が断たれたことなどが挙げられています。
このままではフランス本来の食文化が消滅しかねないという状況の下、2006年シェフ達は「フランスの美食術」のユネスコ無形文化遺産登録を発案しました。2008年サルコジ大統領はその申請をする意向を示し、関係団体の賛同・協力を得て2010年に登録が認められました。
そして、これをきっかけに、フランス人に自分たちの食文化に目を向けてもらうため、様々な取り組みが行われるようになりました。
《 美食術 》
それは単に料理の意味ではありません。 誕生日や結婚や出産などの人生の最も大切な日に、家族や友人たちと祝いの食卓を共にし、時間をかけ会話や料理を楽しむ社会的慣習のことです。美食術では、豪華な料理よりも皆で食事を楽しむことを大事にしています。
《 取りくみ 》
「食の遺産と文化のフランス委員会(MFPCA)」という組織を中心にして、様々な団体・組織が協力しながら、食文化の保護・継承の活動をしています。小学校では毎年10月に「味覚の一週間」という味覚教育が行われ、5000人ものシェフが協力しているそうです。(20年ほど前から実施されているそうです)
また、イベントやテレビなどで広報活動を行い、社会の認知度を高めています。さらには、輸出促進プランを作り、世界のフランス大使館でフランス料理の認知度を高める企画もあるそうです。(ただし、過度の商業主義はユネスコ登録の目的に反します)
《 感想 》
あの美食の国で、ファストフードが流行していたとは驚きです。けれど、社会は変化しますから、お手軽な食事が流行るのも仕方ないところがあるのでしょう。
けれど、これでいいのかと立ち上がったシェフ達、あの帽子の高さに負けないプライドがあったのでしょう。それにしても、「味覚の一週間」はいいですね。楽しくて美味しい学びは、きっと子供たちに深い印象を残すでしょう。
ところで、日本でも11月24日「和食の日」に、全国の小学校給食でだしで味わうすまし汁が企画されています。学校ごとの自由参加ですが、子供たちの感想が楽しみです。 2015.10.29 記0 t
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