まずはカンナのご紹介。器を作るには、ロクロで材木を回転させ、カンナという刃物を当て形を削り出していきます。持ち手になる木の柄の長さを含めて40センチ前後、長い鋼棒の先っちょ折れ曲がった刃は数ミリから数センチ巾です。一見すると図体のでかい耳かきのようで、大工道具のカンナとは全く違っています。(材木の面を削って滑らかにするという使い方は同じです)
ところで、木を削るのに欠かせないカンナですが、通常は市販していません。鋼(今はハイス鋼)を鍛造し、一本一本自分で作ります。鍛造とは金属を叩いて強度を高め変形させる手法ですが、加工を容易にするため熱を加えます。焼き入れの工程では焔の色で温度を計るのですが、高すぎれば鋼は溶け、低ければ硬度不足で摩耗が早く折れてしまうこともあります。
そこそこ納得のいくカンナを作れるまで何年もかかりましたが、それまでは週に一度くらいはカチンカチンと鋼を叩いてカンナを作っていました。(今は年に数度くらい)
幼い頃は、木を削る木地師から鍛冶屋に転職したという話もよく聞きました。どちらも今では珍しい仕事です。
(なお、ロクロ引きの作業をすぐ前で見るのは危険です。刃物が折れたり、木片が飛んでくることもあるので)
人力で仕事していた時代に、木材から板を切り出すため使った刃物です。
北斎の富岳三十六景にも描かれています。木材に乗っている木挽き職人が刃物を差し入れていますが、これが前挽きノコです。
なお、前挽きとは木の繊維に沿って縦に切ることで、横挽きとは繊維を横に切ることです。
危なっかしい姿ですが、昔の人にはすごいバランス感覚があったのでしょうか。
現在は動力で製材するので使いませんが、祖父や父の大切にしてきた道具なので、工房の天井近くに前挽きノコなどを掛けています。古い様々なノコギリは私とともに木曽から伊豆へ引っ越ししてきましたが、ふと見上げると声を掛けられているような暖かな気持ちになります。
私の場合は原木を買うことが多いので、材木店で大まかに製材してきます。その後は工房で、仕上がりに合わせ材に物差しを当て下書きし、丸ノコで細かくカットしていきます。丸ノコは高速で回転する刃物なので、かなり神経を使います。
⇒丸ノコを使う画像 …1(下)木地作り…工房
ほかにも旋盤やバンドソーなど、工房には数多くの刃物があります。
けれど、年を追うごとに仕事の範ちゅうが拡大増殖するので、どこまで増えるのか‥‥